日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

2019年8月29日主題から話す


少し前に、話し方センターが、ある会社の社内研修を担当し、私が講師を務めました。

研修の終わりに、本日の感想をグループで話し合ってもらい、全体に発表してもらいました。

その発表の中で、こんな話に出くわしました。


「今日教えてもらった内容は、本で読んだことがあったり、テレビで聞いたことがあったりして、どれも目新しいものはありませんでした・・・」
と、ここまで話した後、


「あっ!すみません!!!違うんです!
そういうことじゃなくて、知っていたことでも自分でやってみるとできていなかった、そのことに気付いたことが大きな学びだった、ということが言いたかったんです!
すみません!!!」


発言された方は、かなり慌てて付け加えられました。

皆さんも、自分の話が意図と異なる受け取られ方をされそうになり、あわてた経験はあると思います。


では、上の例では、どういう話し方をすればよかったのでしょうか?

そのキーワードが、「主題」です。


この例では、話を始める前に、「今日の研修では大きな気付きがありました。」と話せばどうだったでしょうか。

きっと聞き手は「ああ、この人はポジティブな話をするんだな」と思い、最初にネガティブな話をしても、誤解したりしないでしょう。

話し手も、誤解されると思うこともなく、自分のペースで話ができたと思います。


この「今日の研修では大きな気付きがありました。」というように、話の方向性を最初に話す。これが主題です。

主題とは、自分が言いたいことをまとめた短い文章、です。


主題を始めに言うことで、聞く人はどういう話をするのかがわかり、相手の話を聞く準備ができます。

いわば、相手の頭の中に、話を受け入れる箱をつくることができるのです。


そして、その箱をつくってから、具体的な話をすることで、聞き手は安心してその箱に話の内容を入れることができます。

つまり、しっかりと話を理解することができるのです。


ところで、ここまで読まれた方の中には、「なるほど、要は結論から先に言え、ということだな」と思われた方もいらっしゃると思います。

しかし、「主題」は結論よりも幅広い概念です。

例えば、誰かに相談をする場合でも主題は大切です。

「ちょっといいですか。会社のルールが変わるので、この事務手続きも変えないといけないと思って担当部署に確認したんです。
そしたら、その回答がよくわからないので、別の人に聞いたところ~~」

と自身の行動を時系列で話し始める人がいます。

聞いている人は「だから何が聞きたいの?」と思いながら我慢して途中まで聞いています。

聞きたいことを懸命に推測しながら聞いているので話に集中できません。

話の始めに「誰に相談したらいいか迷っているんです。」と言えば、聞き手はどういうことを答えればいいのか心の準備ができるので、安心して話を聞くことができます。


また、朝礼のスピーチなどでも、いきなり詳しい話を始める人もいます。

「この間、山陰地方に旅行に行きました。泊まった旅館は、夕食はおいしかったのですが、部屋が今一つきれいではありませんでした。~」

と延々と事実を話すことがあります。

聞き手は「で、何が言いたいんだろう?」とずっと考えながら聞くので少なからずストレスを感じてしまいます。

この場合も「よく調べてから行動しよう、という話をします。」と、話の方向性を示してから具体的な事実を話せば、分かり易い話になるでしょう。


話は「相手ありき」です。

相手が話を聞く準備ができるように心を配ることは、聞き手に分かり易い話をするためにとても重要です。


そのポイントの一つとして、今回は「主題を先に言う」ということをご紹介しました。
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